今後のMIDIを取り巻く音楽ビジネスの方向性と将来性に関して
MIDI検定保持者の皆さん、またより上のMIDI検定合格を目指して日夜勉強に励んでいる皆さん、こんにちは。日本シンセサイザー・プログラマー協会で副理事長をしている氏家と申します。よろしくお願いします。 MIDI検定も4年目を迎え全受験者も13042名という規模感にまで発展し、各業界からの注目度も高く、広く社会的にも認知されたと言っても過言ではないでしょう。 3級合格者6,903名、2級筆記試験合格者880名、2級実技試験合格者に至っては212名という狭き門を見事突破した方々が広く音楽業界で活躍しています。 さて、MIDI検定を受験した方々、これから挑戦してみようと思っている方々が最も気にしているのが、実際にMIDI検定が本当に役に立つものなのであろうか?将来の仕事にとってどう有益なのか?という点だと思います。 MIDIというプロトコルを、知識とテクニカルの両面から体系的に習得するという観点だけからみても十分有益な検定であるのは間違いないのですが、実際の音楽制作の現場、すなわち実務の分野でどう 検定で得た知識が役に立ち、実際の採用という観点から見ても有利であるかを検証してみましょう。 その前に、MIDIを使用した実務の現場にはどのようなシチュエーションが考えられるかを認識することが必要です。これは私が編集し日本音楽電子事業協会(AMEI)から出版されている「ミュー ジック・メディア 実務ノウハウ」(写真)の中でも詳しく説明していますが、例えば一番分かり やすい例として、現在皆さんが耳にしているヒットチャートのほぼ100%は何らかの形で密接に 関係しています。(実際、日本シンセサイザー・プログラマー協会のメンバー達も数百万枚売り 上げた有名女性アーティストのアルバムにシンセサイザー・プログラマーとして参加していたり します) このような制作現場では、オーディオのレコーディングとMIDIを使用して音源類を制御するコンピュータ上の音楽制作用ソフトウエア(シーケンス・ソフトウエア)を同期させて音を重ね、作品を仕上げていく手法がとられます。 最近ではオーディオとMIDI環境をシームレスに統合した音楽制作ソフトウエアが主流になりつつある状況で、MIDIのプロトコル上でオーディオとMIDIを制御するため、MIDIに関する深い知識とMIDIでの高度なデータ・プログラミングのノウハウなしでは仕事が全く成り立た ないと言っても過言ではありません。最近ではシーケンスソフトウエア上でのオーディオデータ のミキシング用に数々のミキシング・コンソールが用意されていますが、モーターフェーダー の制御からソフトシンセのパラメータまで、画面上のあらゆるパラメーターを集中制御できる ハードウエアからのコントロールにもMIDIが使用されています。(リアパネルを見るとMIDI端子のみだったりします) もう一つのトピックスとしてはMIDI端子が他のインターフェイスに置き換わっている現実も無視できません。 最近のシンセサイザー、音源モジュール、録音機器にはMIDI端子の他に、USB端子や mLAN端子なども搭載されてきています。USBやmLANを使用することにより、 MIDI端子を使用するよりはるかに高速に大容量 のデータを送受信できます。 ですがMIDIのプロトコルそのものは普遍であることをお忘れなく。 さて、このようなプロの制作現場だけでなく、コンシューマー・レベルの音楽制作ソフト ウエアでも全く同じシチュエーションで、MIDIとオーディオをストレスなく、かつ簡単に扱えるようになってきました。 これはコンピュータの飛躍的な性能の向上やメモリー、記憶媒体の容量 の増大とそれらの大幅なコストダウンが起因しているのは言うまでもありませんし、それによってプロと アマチュアが使うコンピュータ、ソフトウエア、機材にほとんど違いがないのも事実です。 このような状況のなかで、有能なデータ制作プログラマーや音楽プロデューサー、 ディレクターを求める企業と、その人材を見極める指針として、また自分が培った MIDIに関するノウハウの証として認定制度の要望が各方面から挙がってきたのはごく 自然な成り行きと言えるでしょう。 このMIDIに関する深い知識がMIDI検定3級、2級筆記試験に、MIDIによる高度なデータ・プログラミングのノウハウがMIDI検定2級実技試験に直結、完全対応している のがお分かりいただけると思います。 その他にも、通信カラオケで使用する音楽データの制作はMIDIデータで管理されている のは有名です。(一時期は数万曲のオーダーが業界をバブルのように駆け巡っていましたが、 現在はすっかり落ち着いています)今は携帯電話の着信メロディの制作はかなり需要が あるようです。携帯電話も様々な機種があり、内蔵されている音源や曲制作のフォーマット がばらばらだったのが、GML(ジェネラル・ミディ・ライト)(図)という統一フォーマット がアナウンスされ、制作する側も利用する側もより便利になってきています。 よくMIDIは時代遅れでこれからはオーディオだ、MP3だと言う輩がいますが、上記の点からも全くの勘違いであることがお分かりでしょう。 確かにオーディオの扱いは昔のアナログ・マルチトラックからデジタル・マルチトラックへ、 そしてハードディスクレコーディングへと、録音媒体がコスト、便利さ、手軽さの面 で画期的に進化しましたが、録音して収録するという行為そのものは創世記から何も変化していません。唯一、新たな手法、方法論としての波形データを組み合わせて音楽を構築していくという制作スタイルは画期的と言えるでしょう。(ダンス系やリミックス の分野では定番の手法として確立されています) MIDIは誕生して20年程の比較的新しいプロトコルで、音源、音楽制作ソフトウエアや コンピュータの進化と共に可能性も飛躍的に向上し、現在に至っています。 ただ、データの転送と言う観点で見た場合は、MIDI端子よりもUSB、mLAN等が圧倒的 に有利です。しかしあくまでもMIDIとはMIDI端子のことではなく、データ制御のための プロトコルである事を勘違いしないようにしましょう。 MP3に至っては音楽制作の現場で出来上がった音楽の完成品を圧縮して聞くだけの フォーマットであり、音楽制作自体には何の関係もないのが現実です。 それではMIDIを取り巻く音楽ビジネスの状況を、必要とされるスキル、人材の需要、 収入という3つの観点から今一度整理してみましょう。 ●○は人材の需要度、★☆は収入を表わしています。
今後も音楽ビジネスは多種多様に変化していくのは間違いありません。 その音楽ビジネス業界に身を置き、最前線で活躍してみたいという要望があるならば、 最も重要なことは、常にスキルを磨き、ノウハウを蓄積し、そして情報に敏感であることです。 みなさんの持っているMIDI検定で培った知識、ノウハウは、様々な局面 で必ずや実を結び 花を咲かせることでしょう。そして次の音楽業界を背負って立つ強大なパワーとなるのです。 御健闘をお祈りいたします。
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