第2回・MIDI検定2級ライセンス
 保持者座談会(東京)


平成14年10月19日4時_6時
エドモントホテル(千代田区飯田橋) 3F 「ふじなみ」の間


 中田健(音楽電子事業協会専務理事) 今日はMIDI検定制度を広く世の中にPRしていくため、皆さんの生の声を通 じてこの検定制度を評価して頂ければと思います。具体的にはどんな方が受験され、今現在どのような活躍をされているのか、将来どんな夢をお持ちなのだろうかをお聞きし、さらに皆さんのお話を通 じて、これから2級を受検される方達の参考になれば幸いです

 3級は4年前にスタートしまして、今までに約10000名が受験し、約7000名が合格しています。2級は3年前に始め、約1200名がトライ、そのうち合格者は212名です。皆さんはかなりレベルの高い方々であると言えます。また4級を今年から始めまして、今日ご出席のほとんどの方は4級を教えることができるライセンスを持っておられます。今年の5月から始まり、既に1200名位 の方が皆さんの指導のお陰で習得しました。学校も8校で採用されています。

 それではまずご自分のプロフィールからお願いできますでしょうか。


 竹田裕紀(AVEX ARTIST ACADEMY/18歳)
一年ほど前まで、カラオケと着メロのデータ制作をしていまして、そのつながりからレコード会社のプレゼンテーションなどをしています。仕事を始めた同時期にMIDI検定を受け、2級は一度落ちているんですが、まあ2回目で合格することができました。


 柳原麗子(ピアノ教師)
 小さい時からピアノ一筋でやってきまして、ピアノの先生を職業にしてきましたが、15年程前にエレクトーンと出会い、初めて電子楽器に触れました。ピアノはクラシックばかりでしたから幅広いジャンルの音楽を勉強し、その時にいかに楽しい世界があるかに目覚めたのです。エレクトーンでMIDIにつなげることができ、コンピュータがもともと好きでしたから、どんどんはまり込んでいき、あまりに楽しいので生徒達にもこの楽しさを分けてあげたいと思いました。

自分が正しく作れているのかを確認する意味で、MIDI検定の3級を受験し、さらに2級にも合格することができましたので、データを作ることにおいては自信を持つことができました。生徒の発表会や先生方が伴奏データを欲しいと言われた時にもある程度は自信を持って渡せるようになりました。

 未来なんて大げさではありませんが、DTMを始めた時から私は映像と音楽を結びつけるのが夢でした。なかなか映像まで手が付けられませんでしたが、ようやくマックのiMovie でできそうなので手を付け始めたところです。


 金川聡一(ソフト制作会社勤務/21歳)
 今年で二十一歳になります。MIDI検定は今年3月まで在籍していました日本工学院専門学校で、大浜先生や國友先生のお陰で3級、2級ともに合格することができました。先日の4級講師セミナーも受けて取りました。そもそもは小さい頃から十一年間ピアノをやってきてピアニストになろうと頑張ってきましたが様々な事情でピアノができなかったため、作曲をやってみようと、四年ほど英語の資料だけをもとに独学でMIDIを勉強してきました。中学や高校の頃はまだAMEIやJSPAがあるのを知ることができなかったので、その頃からインターネットなどを通 じ、独学でハードやソフトをいじってきました。現在は着メロの制作会社に勤めています。傍ら、ゲームのBGMや友人のバンドの曲を書いたり、ヤマハのピアノの講師試験を受ける生徒さんを教えてたりしています。今後は、MIDI検定4級講師をせっかく取りましたので、セミナーなどを行っていきたいと思います。


 藤島英(礼音勤務/22歳)
 私もクラシックピアノから始めまして、高校の時にバンドを組み、ドラムやベースのパートが足らなくて、心もとなくて機械に頼ろうと、楽器屋さんに行ってヤマハのQYを買いました。それがきっかけで自動演奏の魅力にすごく目覚めたんです。ピアノを長いことやっていると両手を合わせても2パートしか弾けないわけで、自動演奏を知った時は言い表せないほどの感動でした。それでピアノの道を閉ざし(笑)、パソコンを買い、作曲を始めたり、バンドを楽しんだりしました。それから東京に出てきた時にMIDI検定があることを楽器屋さんのポスターで知り、受けることにしました。今は私も着メロを作っています。金川さんは会社でやっているそうですが私は在宅勤務です。

 中田 今は着メロの打ち込みが沢山必要になっておりまして、人材を各社が求めていることは事実ですね。

 柳原 実は先日、知らない方から電話があって、MIDIをやって二年になり、着メロを作りたいけれども、習いに行っている先生が非常に厳しいことを言うと話していました。私は知識と実力がものを言うからMIDI検定を勧めたら、その先生からそんなものは必要ないと言われたそうなんです。実力があると言ったところで誰もそれは分からないし、検定を持っていれば力が認められるじゃないですかと逆に言ったんですけどね。


 氏家克典(MIDI認定制度研究委員会副委員長、日本シンセサイザー・プログラマー協会副理事長) 
企業によって考え方はいろいろあるでしょうね。何でもいいからとにかく人を集めたいという所もあるでしょう。でも私だったらMIDI検定2級を持っている人は確実に優遇します。2級の実技を突破した人は当然それなりの評価があるわけですから、それは2級に限らず、選別 するという一つの選択肢としては当然のことと思います。


 山口晃生(日本工学院八王子専門学校/20歳) 小学生の時にエレクトーンをやっていたのですが、野球とかいろいろ興味もあって、結局3年位 でしょうか、とりあえず楽譜が読めるようになった頃に辞めてしまいました。でも自宅でエレクトーンを弾いて遊んだりはしていたんです。中学に入り、電子キーボードで左手で3和音を抑えるとリズムが出てくることを覚え、それまでコードを知らなかったので、伴奏にメロディを付けて曲を作ったりしていました。高校になると、その伴奏も決まったパターンの繰り返しなので、自分で作れたらもっと面 白くなるのではないかとシンセサイザーを始め、カタログでDTMを知ったのもその頃でした。MIDIは、始めはエクスクルーシブとか分からないので一つ一つ消してどんな効果 があるのだろうかと試したりしていました。そんなことを通して将来はどうしようと考え、実家は関西なのですが東京に出てきて、日本工学院の八王子専門学校で大浜先生や國友先生などに教えて頂きました。

 今はXFデータというカラオケにコード情報を付けて、カラオケやギターの練習に使われるデータ制作の仕事をしています。またプライベートでは、アルバム一枚を作ることを目指して楽曲制作を行っており、将来の夢はプロになって皆さんにいろんな曲を聴いてもらいたいと思っています。


 城間一郎(自由業/37歳)
 私は30も半ばを過ぎまして、MIDI制作を初めて行ったのは12、3年前、その時は音楽制作会社にいる友人の勧めで博物館のBGMや、企業の販売促進用ビデオのBGMを制作していました。始めは単体のシーケンサーでやっていたのですが、それよりもコンピュータで作る方が良いと友人から聞き、マックを購入しました。それまでバンドマンの仕事もしていましたが今はお休みしています。ただ制作の仕事だけでは食べていけなかったので、印刷屋でアルバイトをしたり、そのうち通 信カラオケの大量発注があって、それを始めてから仕事には困らないほど毎日仕事を頂くようになりました。フリーランスとしてもう10年になります。昨年からは着メロ制作を始め、今は仕事のほとんどが着メロになりました。

 MIDI検定を受けようと思ったのは、たった一人でやっているものですから、横のつながりが欲しかったのです。もっと業界の人達と知り合いになりたかったし、少し甘えた言い方をすると、仕事の斡旋が後々あるかもしれないとも思いました。

 中田 実際に企業からは、2級を受かった人を紹介して欲しいという要望が何件か寄せられています。もちろん人を採用する時は能力は何分の一かで、人格を評価する方がウェイトが高いわけですけれども。

 氏家 城間さんから横のネットワークを作りたいとの話がありましたが、前回の座談会でも全く同じ話が出ました。制作一途にやっていると皆さん悩みも同じで、そういう悩みを共有できる場が絶対欲しいと。そういう意味でmidilisence.com(ホームページ)は最高の場になるのではないかと我々も期待しています。

 中田 midilisence.com のスタート時の内容はまだ未熟ですけれども、皆さんが意見交流できるような内容に徐々に発展させていきます。掲示板や作品をアップできるページ、あるいはメーカーからの求職情報も載せることができれば良いと思っています。順次進化させて行きますのでご期待ください。ちなみに全体の構成は一般 の方用、3級と2級の合格者がパスワードで中に入れるライセンサー用の二本立てになっています。


 佐野雄二(アイデックス音楽総研/28歳) 皆さんの話をお聞きすると幼少の頃から音楽に関わっておられてびっくりしています。私は音楽を始めたのも20歳過ぎからです。高校の教師になりたいと思い、大学在学中のちょうど教職を取っている時に打ち込みを始めました。そこから音楽一本に絞り込んだのです。卒業後に東京に出て来まして、専門学校に通 っていました。ちょうどMIDI検定がスタートした頃でした。ところで皆さんは検定試験を受けようと思って受けていますよね。僕の場合は全く逆で、友達が勝手に申し込んでいたんですよ(笑)。これも運かなと。で、申し込んでしまった以上、落ちるのは嫌だから勉強を始め、3級も2級も同時になんと一回で受かりました。現在は氏家社長のアイデックスさんにお世話になっております。

 皆さん着メロの仕事をやられているようですが、僕は着メロの制作に携わる一方で制作を依頼する業務にも関わっています。実は働くまではバンドでボーカルをやっていて、人付き合いが好きなのでいろんなネットワークを作ることができました。MIDIの資格を持っていて、皆さんも思われているかもしれませんが、取ったからどうなんだというのもあると思うんです。やはり今日のような意見交換の場はとても有り難いですし、皆さんとお知り合いになれればと思いまして参加させてもらいました。夢とかは追々にお話したいと思います。

 中田 ではMIDI検定そのものに関して、試験の内容、実技試験の当日の機材など、ご意見ご要望はいかがですか。

 金川 私は第3回目の3級、第2回目の2級試験を同時に受験しました。で、前回3級、2級の試験問題のチェックのアルバイトを頼まれまして、自分の試験も含めて3級は3回、2級は2回解いてみたわけです。正直なところ内容は回を重ねるごとに洗練されてきたと思うんですが、他の試験に比べるとまだ突き詰められる部分があるのはやはり仕方のないことだと思います。 ただ、MIDI検定は正直まだ知名度が低いんですね。いくつかの着メロ、カラオケの制作会社、ゲーム会社で仕事をする経験がある中で、MIDI検定の知名度が低かったのはどうしても否めません。MIDI検定の存在すら知らない所もありました。名前を知っていても内容がどんなものか知られていないので、2級を持っていても2級はどういうレベルなのと聞かれたこともあります。これはもう絶対的な今後の課題であると思っています。自分にとっても小さなことでもいいので何かお手伝いできれば嬉しいです。前向きに今後も進めていって欲しいので、よろしくお願いします。

 中田 知名度に関してはAMEI会員会社には今後も積極的にアプローチしていきます。その一つがこの座談会であり、2級に合格された方達はどのようなプロフィールで、どれだけの実力をお持ちなのかをお伝えしていきます。それを認知している会社はいくつもあるわけですが、全部が全部そうではないので、今後あらゆる方法でPRしていきます。2級合格者は第1回目は120名、2回目が96名、3回目は500人近く受けた中で僅か25名でした。

 藤島 やはり知名度は低いと思います。今は小学校でもパソコンを使っていますよね。もしその段階からMIDIに接していくことになれば、もっと身近になっていくのでは。4級もできたことですし、AMEIから4級の講師の人達を地方にまで送り出して頂いて、学校で教えることになればいいですね。4級の受講者が増えれば、3級、2級とランクが上がっていくだろうし、知名度も増してくるはず。4級は試験と言っても、とても簡単なものですよね。

 中田 試験と言いましても、きちんと勉強しましたかという確認の意味が大きいのです。現在4級講座を開講されているところは30か所くらいあり、東京、大阪、北海道、仙台など全国に広がっています。講師の認定を持っていて講座を開いていない方もおられますので、認定講師で見れば全国に30名ほど散らばっています。

 山口 地方の人達もMIDIを家でやっているけれど受けに行く会場が少ないという点はありますね。4級の認定講師ということで全国に散らばっているのは良いと思いますが、試験会場がもっと地方に広がり、地元の楽器店でポスターを見かけたり、身近に受験できると良いです。

 中田 3級は回を重ねる毎に拡充し、現在80か所で実施しています。2級の実技試験は機材など設備の点と試験官の配置のこともあり、今のところ東京、大阪以外は開催していません。中には北海道や東北から東京に受けに来られる方もいます。人数では5割は関東、3割は関西、2割がその他という割合です。

 城間 私は公式ガイドブックがとても役立ちました。いつも自分のことだけだと特定のジャンルにしか目がいかない。ガイドブックを勉強することで広く目を向けることができました。例えば、MIDIデータはパソコンの中でどういう信号で送られているのかなど、普段は考えもしないことを学ぶことができました。また、映像と音楽の同期を知らなかったので、オフセットの計算の仕方とか、自分の仕事で関わっていること以外のことが勉強できて良かったです。2級の実技試験は、間違い探しという点で、それはそれで時間を目一杯使って大変だったのですが、果 たしてまっさらな形からデータを作った時のクオリティをこの試験で計れるのかな、という疑問はありました。

 佐野 今後は4級の制度ができて、それを教えていく側の資質が問われてくると思うのです。4級はコンピュータで音楽を全く作ったことのない人達が受けに来られるわけですよね。私はアイデックスミュージックアカデミーで4級のセミナーを一部担当した経験からですと、受講者は必ずしも打ち込みをやっている人とは限りません。パソコンを買ったけどどうすれば音楽を聴けますか、という辺りから始まるんです。そうすると4級の教え方は初めから音はどうなっているのかという部分から始めないといけない。それは今の4級ガイドではあまり触れられていないので、そこをまず一時間ほど行い、それからガイドブックに入っていく形にするとか、教える方がガイドブックを全部把握した上で足りない部分を独自にやっていかないと多分教えられないと思うのです。認定を持っている方は自分にとっては分かっている知識なので、こうなんですよ、と言ってしまいますが、受けている人はおそらく頭の中は?でしょうから、教える側として結構必要だと思いますね。資格を取ることは皆さん同じでも、あとは教える側の資質の部分で、4級は当然受ける人達が増えるわけで、そうなるとレベル差も激しいと思うので、いかに上手く教えるかがポイントです。

 それからMIDIはどうしても打ち込みのイメージが強いので、先程話に出た映像との同期もあるでしょうし、ライブハウスに行くと照明との同期もできるじゃないですか。僕も一度クラブに行った時、DJの隣にミニ鍵のMIDIキーボードが置いてあって、何に使っているのかなと思ったら照明をコントロールしていたのです。こういう場面 でもMIDIの人材が必要だと感じましたね。MIDI検定が打ち込みだけでなく、今だとクリエイターの登竜門みたいな位 置付けだと思うので、3級や2級のレベルは外部のスタッフ的なところでも必要になってくると思います。

 内容は今のままでもいいと思うのですが、今後、2級を持っているからこういうことをやっているんですよ、という人がいてもいいのかなと思うんです。

 中田 映像の部分は社会的には要求されている部分でしょうね。MIDIと映像、音楽と映像とか。

 氏家 MIDIを取り巻く環境の中でどういった業種が使っていくのかを結びつけていけばつながっていきますね。

ところで先程、藤島さんが言われた学校教育でDTMを行う話は、今は総合的学習の時代ですし、本当に面 白いと思います。実は先日、娘の小学校で講師をやってきたんですよ。総合的な学習の時間と言いまして、父兄が立候補して何かを教える時間があり、私は「コンピュータで音楽らくらく」という講座を行いました。JSPAで以前制作した「MIDIってなあに」というリーフレットを配り、いろんなソフトウェアや音の仕組みを教えたところ、ものすごい興味を持ってくれました。感想文に「わたしもMIDIのことを知ることができて良かったです」と沢山寄せられました。

 藤島 それは身近な体験になりますね。私が学生の頃はDOS/Vの境目でした。今のようなシーケンスソフトがないから、もう難しすぎてアウトですよ(笑)。

 金川 実際にものすごくインターフェースに恵まれた時代になってきて、子供でも簡単に触れる時代ですからね。

 MIDIは年齢に関係なく興味を持ってもらえるんですよ。知名度が低いのは興味が持たれていないわけではなくて、実際に紹介するとものすごく関心を持ってくれることが多いのです。

 氏家 正にその通り。実感しましたから。

 柳原 私の生徒でも男の子はすごく興味を持ちます。打ち込むと音符が出て、音が鳴ってとても喜ぶ。女の子はゲームとかにいってしまのですけどね。

 金川 例えば作曲をするためのものだよ、と紹介をすると食らいついてくれないかもしれないけど、自動演奏とか、音楽ではなくてクラブのVJでも照明の操作に使っているんだよ、と言うと食らいついてくることが多いのです。そういう活動の手を広げるだけで付いてくる人は大勢いると思います。

 佐野 それが4級でつながればいい。

 中田 少し話が変わりますが、MIDI検定1級はどう思いますか。2級はMIDIに関わるソフト制作を制作現場で即実践力となる人材を認定するものです。ですからどこのソフト会社に行ってもすぐに仕事になります、ということを世の中にアピールしています。前回の座談会ではさらに上を作って欲しいとの意見がありました。

 柳原 私は1級は試験で取るものではないと思います。自他共に認めるものではないでしょうか。誰でも試験を受ければ受かって良いというものではない。

 佐野 行き先が全然違うと思いますね。

 金川 以前ゴールドライセンスにしようとの話もあったようですが、今のまま1級を設けたところで、作るのも困難な上に合格者がどれほど出るかという話になってしまうので、有り得るとしたら方向を変えるべきだと思います。4級は3級が簡単になったものではありません。CDの再生はどうするとか、マルチメディア検定に近いですよね。それと同じで1級をMIDIに限らないもっと実務的なものに、ただ難易度を上げるのではなくて、実務によるジャンルをもう少し変えた試験ならば有り得ると思います。

 佐野 いろんなジャンルでの1級はあっても、一つの意味での1級は難しいかもしれない。

 中田 1級ではありませんがゴールドライセンスは実は存在していまして、大浜さんや氏家さんをはじめ、冨田勲さん、小室哲哉さん、浅倉大介さんなどに差し上げています。

 柳原 そういう方達が1級なのではないでしょうか。試験を受けて取るものではないと思いますが。

 金川 今の2級の方向性と同じだったら本当に合格者が出るかどうかは難しい。

 佐野 アーティスティックなところまで問われてくるでしょうね。筆記試験ではコンピュータプログラマーのレベルになってしまうと思うので、1級でそれをやるのは困難だと思います。

 金川 皆さん2級に受かっていらっしゃるので、記憶されていると思いますが、2級だけでもものすごく膨大なことをやっていると思う。例えば、スタンダードMIDIファイルのヘッダのあたりから、デルタの話、ジャケットジャグの話、SMPTEまで本当にいろいろなことがあって、この量 を上回る1級というのは大変過ぎます。

もう2級の時点でプログラマーの領域までかなり入っていると思うんです。あの試験の中身をしっかり理解していればスタンダードMIDIファイルのプログラムは書けてしまうんですよ。これ以上は方向性を変えるしかないように思います。

 氏家 やはり2級そのものを訴求していく方が先決でしょうね。

 佐野 普及させていく活動は僕らにも手伝えると思います。フリーの人でしたら時間も作れるだろうし、普及していくための会があるのもいい。

 中田 4級の指導者認定はMIDIを普及をして頂くための役割もお願いしています。

 柳原 私も指導者認定講座を受けました。自分が4級の方を教える力があるのか、どのくらい教えられるかを確認するために受けました。

 佐野 僕はアイデックスミュージックアカデミーで全6回の3級講座をやらせて頂きました。試験の前に集中して行うのも良いのですが、長い期間かけて章ごとに細かく行っていくことは、実際にやってみて良いと思いました。それと個人で4級講座をやりたい人はどうすればいいのか、告知の方法がないですよね。どこで何人集めればよいか、AMEIからアプローチでもなければできないと思うんです。

 金川 私も今は開いていませんがいずれやってみたいと思っています。現在4級を教えているわけではありませんが、インターネットでMIDIにまつわるメールマガジンを行っています。つい最近、音楽用にMIDIを使っている人達のコミュニティーサイトを立ち上げました。

 また、知り合いのピアノの先生に頼み、生徒さんや知人を通 じ、個人的に小さいことしかできないけれどもMIDIを広めようとはしているんです。それでも個人ではできない限界があって、そこで求めたいのがAMEIやJSPAの後ろ盾みたいなものなんです。つながり自体が薄いじゃないですか。例えばこの座談会の回数をもっと増やしてすり合わせみたいなものをして欲しいわけなのです。

 佐野 そう思いますね。触れ合いがあればあるだけコミュニティーが広がっていきます。

 金川 我々の横のつながりだけではダメで、AMEIやJSPAとすり合わせのできる場所が欲しいという思いが強いです。

 佐野 先程、3級対策講座と言いましたが、どちらかというとMIDIとはどういうものなのかを教えるのがメインです。でも3級公式ガイドを教材に使った方が分かりやすいので、タイトル的には3級講座のような感じになってしまうのかな。

 氏家 2級ライセンサーが3級講座を行うためには公認が必要だと思います。それを正式に公認するための情報の共有を密にしていくことですね。

 中田 実際には教える資質という面も重要です。midilisence.com には4級指導者の講師名、開設場所等は掲載します。2級のライセンス保持者も名前を掲載します。

それではmidilisence.com の内容について、どんな内容を希望しますか。

 竹田 MIDI検定そのものが最終的にはマルチメディアにつながっていくことを考えた時に、今の検定試験だけだと実技で音楽を作る方が主になってきて、その人達は学術的な方と実技の方を習得されるのでしょうけれど、それができたからといって認定の普及ができるとは思えません。昔、小室哲哉さんがコネットプランをやったように、最終的にはマルチメディアにしていくことが普及の第一歩だと思います。そこから考えると、メンバーページはMIDIというもので見るのではなく、音楽の大きなところから見た上で、例えば映像のようなセミナーをやって欲しいです。MIDI検定の人達はまだMIDIのことしか分かっていないと思いますので、いくら4級講師を生み出しても、いざマルチメディアはどうかとなったら、4級程度のことしか答えられないかもしれない。逆に1級を設けるならば、その足場固めとして、2級なり、それくらいのレベルの人に少しずつマルチメディアに興味を持ってもらうようにしたい。最終的に掘り下げるのは個人本人ですけど、その後ろ盾をするような感じで、ちょっと応用的な、音楽ではなく、それこそMIDIを使って何かのイベントを見せるとか、楽しみもあるマルチメディア版があると良いと思っています。

 今、自分で行っているプレゼンテーションでは、音楽を作れるけどMIDIを扱えない人が沢山います。実質的に使える人に頼ってしまう形になっているんですね。表面 的には専門分野の人がどんどん出てきてやっていますが、どちらかというと個人で映像の編集までするようなことがものすごく普及してきて、現場で使うカメラは高価ですけど、ホームビデオでしたら個人でできるじゃないですか。個人のマルチメディア作品をどんどんメンバーページで提示できるようにしていくのも一つの方向かなと思います。

 中田 つまり音楽を中心にしてマルチメディア全般 についてのセミナー、記事、ニュースの掲載ということですね。


 大浜和史(MIDI認定制度研究委員会副委員長、日本シンセサイザー・プログラマー協会副理事長) 映像というのはMIDIができた頃から話題にはなっています。ただハリウッド映画でも分かるように、映像っていうのは監督の才能も含めて誰にでもできることではありません。音楽以上にできることではない。子供のビデオを撮るのは誰でもできるけど、それと映画の隔たりはものすごくあって、音楽よりもすごいですよね。それをひっくるめて考えると大変な世界に足を突っ込むことになる。片手間でできるような代物ではないのです。で、仕事の現場に行くと解かるけれども、それぞれの専門職の人がいて、役割分担があって、その中で相互的に創り出していくわけで、マルチメディアと言っても一人で何でもできるわけではないんですね。今まで皆、これからはビジュアルだと20年間も夢を追って来たけれども、それを技術の中に取り込んで、評価する、教えるというのはすごく難しいこと。専門学校や大学の学科で言えば、映像と音響は別 に考えています。演劇はさらに別に考えているし、それでも2年や3年では足らないわけです。それらを総合的にというのは昔から言われているものの、なかなか難しいものなのです。

 コマーシャルが30年間そうですけど、映像があって音楽をそれに合わせる、音楽家がどうこう言うものではないですからね。

 金川 仕事になるレベルに掘り下げるとものすごく難しいので、4級の中に自分達で楽しめるレベルで盛り込むことは決して不可能ではないと思うんです。アシッドというソフトがすごく売れたのは、ネタが既にあって並べるだけ。これは作曲という行為寸前です。素人でも子供でもポンポン置いていけばそれっぽいものができるわけで、同じようなものが映像ソフトでもいくつか出ています。あくまで掘り下げないで、この程度のことができるということと、楽しめるということを解釈させるレベルだったら、触れられないことではないと思います。

 柳原 私も息子が映像関係の仕事をしていますので、私なりにできることで、音楽主体で映像バックで何か作れたら楽しいなと思います。

 藤島 やはりmidilisence.com は簡単なことから入った方が良いと思います。そうすると偶然立ち寄った人も面 白そうだと見てくれますよね。2級、3級の難しいところは奥に奥に入らないと見れないような構造にするとか。

 金川 一般人に対する間口を広くするべきですよ。

 柳原 その意味で何と言っても、まず来て楽しいという第一印象でないと。それがないとただプロフィールやデータが並んでいるだけではつまらないでしょうね。

 金川 一番最初に固めて欲しいのは誰でも見れる部分を先にやって欲しいです。まず一般 人から。もっと知名度を高めるなり、興味を持ってもらう部分を足固めしないとこの先は続かないでしょう。

 城間 私は却って逆でして、会員専用ページに入って、皆と横のつながりを作りたいと願っています。仕事が一杯来てしまい、自分でこなせなくなって断りきれない時に、手伝ってもらえる仲間がいるとすごく心強いです。逆もあって、今は暇なんだけど手伝えることある?となれば、仕事を分けてもらえるかもしれない。自由業でやっている身としては有り難い。情報交換よりもっと掘り下げて仕事にストレートにメリットになるような部分を期待します。

 中田 掲示板は何れ作ろうと思っています。あと皆さんの作品を載せて、評価するのではなく、世の中に出していくことをしていきたいです。

 柳原 いろんなホームページにMIDIデータがアップされていますが、聴いてみてわあ素晴らしいというのはなかなか巡り合いませんよ。2級ライセンスの人が作った曲はいいなあと思われるようなものが載せられるといいですね。

 氏家 アップするからには著作権が絡むものはダメですよ。他人の著作権を侵すものは絶対にダメです。

 藤島 リンクを貼って2級、3級のホームページを紹介してもらえる人を募れば横のつながりができます。midilisence.com 自体はマルチメディアを主体にしたソフトなものに仕上げて、その仲間を欲しい時にはリンクに飛んでいくのがいい。

 金川 少なくてもBBSなり、曲を置くくらいの場の提供だけでも、認知はされると思います。しかしMIDI検定を受けようと思った時に、AMEIやJSPAのホームページを見ると、硬いですよ。ずばり正式なことは載っていても、一般 人から見て入りやすさという点では、むしろマイナスイメージであることも有り得ります。

 佐野 ホームページは見せ方からも大事ですよね。やっぱりメールとかでなく、人と人が触れ合う機会はどんどん増やして欲しいです。

 金川 先程も述べたようにMIDIに興味を持っている方は実際にかなり多く、10年前だとDTMオタクとかばかりだったけど、今はそうでもないわけです。それでもDTMで集まる場はそんなにないですよ。その場を作るだけでも認知度はものすごく広がると思います。

やっぱり横のつながりが音楽、ことDTMには弱いですね。

 佐野 合格したからには、先が見えていると受けやすいところもあると思う。受けたからどうなのってなると、受ける前までの段階でどうしようかなと悩んでいるのはそこだと思います。誰だって仕事ができるとか、年収いくらとかなったりとか(笑)

 藤島 それだけにmidilisence.com の期待は大きいのではないでしょうか。

 金川 ホームページに入った人が見てみたいなと思わせる作りをしているメーカーはいろいろあります。もちろんコンテンツによるわけですが、一般 人向けは引きつけようとしているものが感じられます。AMEIやJSPAのホームページは用途が違うじゃないですか。だからこそmidilisence.com のホームページが必要とされていたんですよ。

 佐野 やはり見やすい分かりやすいは必須。携帯のサイトでもどこへ行ったらいいのか分かりづらいものもあるから、分かりやすさは絶対に必要です。

 柳原 楽しく明るいページが一番。

 氏家 特に4級が広まった時に内容が硬いのはね。

 金川 そこで連載のコラムでも書いてくれるくらいの勢いがあったら。

 城間 日記みたいなものも面白い。着メロの苦労話とか、個人個人の話とか。

 藤島 200人からいるわけだから一人一人担当したらかなりの人数になるし、面 白いかもしれない。

 城間 制作日記みたいなものは結構面白いと思います。作品を聴きながら日記を見るとか、ついつい読んでしまいますよ。

 金川 とにかくmidilisence.com は人が沢山集まる企画をやった方がいいですよ。

 中田 それでは最後に、今までにない話題で一言ずつお願いできますか。

 城間 今日は今後つながりができそうな方達がいらっしゃいましたのでとても良かったです。こういう集まりは今までなかったので、とても新鮮な感じがしました。

 山口 学校で楽しく教えたりするのはホームページ上でもできるはずなので、認知度を大きく、範囲を広くすることを含めて、midilisence.com に期待しています。また指導者認定については、経験の多い人もいれば少ない人もいると思うので、その人達の交流の場が持てれば、私はこういう教え方をしていますといった情報交換ができると良いと思いました。

 藤島 私もmidilisence.com に期待しています。横のつながりができるのは本当に有り難いことですね。知り合いの知り合いは他人なわけですし、これから知名度は加速していくのではないでしょうか。将来が楽しみです。

 金川 AMEIとJSPAに関して言わせて下さい。私は結構、情報を集めるのが好きなんです。AMEIやJSPAがネットにしても、仕事場にしても、批判されることがあるんです。それは単純に批判ではなくて、その半数以上、自分の憶測だと8割方は何かを期待しているのです。だけど何だか動かない、自分が期待した通 りのことができないから、うずうずしている。待っているのです。必ずしもバッシングではなくて、今後に期待しているという意味なので、midilisence.com がすぐに順調とは行かなくても着実に続けていけば、実際にMIDI検定も知名度は上がってきているので、これからもっと活動を続けていって欲しいと願っています。

 こういう座談会はすごく楽しませて頂いていますし、とても有り難いです。もっと回数を増やして頂きたいくらい。ホームページがあったとしても、ネットで話ができることと実際に話をするのは違うので、座談会でもイベントでも、こういう場をまた作ってください。

 柳原 何も言うことないなあと思っておりましたが、すごく楽しい雰囲気で皆さんいろいろな経験をお持ちで、とても嬉しかったです。

 竹田 もしコラムや何かをやる時に、必ずホームページを見に来てくれる保証はないじゃないですか。CLUB MID.の冊子もなくなるので、メールマガジンみたいなものを送るのは無理なのでしょうか。

 中田 皆さんからの要望は大切にしていきますので、どんどん意見をして頂いてより良い展開をして参りたいと思っています。

それでは最後にお二人からお願いいたします。

 氏家 今回も非常に素晴らしい皆さんの意見をお聞きすることができ、今後のMIDI検定に参考になることが多々ありました。ありがとうございます。

 大浜 今日お話が出た中で前回も大分ありましたけれども、MIDIを自分でより詳しくなることの一番の近道は教えることなんです。正しく指導することで初めて自分も納得して理解してくるのです。これはどんな学問でもそうだと思います。先程、2級以上の評価をとの意見が出ましたが、その評価の一つとして、教えた経験がどのくらいあったか、育てた学生がどのくらいいたのかというのも評価の一つにあると思いますね。あとやはり芸術であり、一つは卓越した技術ですから、全部を知っているのではなく、ある部分が飛び出ていて、それが今までになかったものであることが独自性となるので、皆が知っていることと同じではダメですね。これからの技術の中で自分はどこに飛び抜けていくのか、今までになかった何ができるのか、それは皆さん自身で目指して活躍していってください。

 それから仲間と出会う機会が少ないという話が出ました。職種にもよるかもしれないけれど、私は昨日も学生のバンドのライブに行きましたし、やっぱり出歩いている人はすごく付き合いが広くなって、活動も活発になってくるものなのです。11月はJSPAのシンセサイザーフェスタもありますし、そういう機会にぜひ外にお出かけ下さい。顔を合わせて話ができれば顔も広がるし、人との付き合いは音楽の上でも一番大事なことです。これからも多くの方達と仲良く付き合っていければと思います。

 中田 皆さん今日はとても有意義な場となり、ありがとうございました。今後とも普及のための一翼としてご協力頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。